村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

楽天の潜在的アキレス腱はカード事業にある

楽天、赤字353億円 携帯事業への投資が利益圧迫―1~3月期



楽天のアキレス腱はそこではない。

<楽天の株価チャート>
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楽天が決算を出してきていくつかレビューしている人達がいたが、いずれも重要な視点が抜けているなと感じた。
それは楽天カード事業のリスクである。
楽天トラベルが壊滅的なのも、モバイルが投資時期なので赤字なのもはっきりいってわかりきっていることで、しかもこれは手元で計算できるレベルの話なので、実はこれらはそこまで足元株価に危惧するようなインパクトがあるものではない。
本当の楽天のアキレス腱は楽天カードにある。

楽天カードがなぜアキレス腱なのかを説明する前にまず金融会社のリスクをどう判定するのか考えなければいけない。
金融絡みの財務諸表を分析する際にはどこかのインフルエンサーが提供しているような財務諸表の分析の仕方みたいなものから一歩先を行く必要性がある。
なぜなら普通の財務諸表分析書籍が書いてあることは「今現在の保有している資産の価値を見たままの数値で判断している」からである。
金融関連企業(ローンを提供している金融企業)はそれでは全く通用しない。
なぜならそういった企業の分析に際して必要なのは、「今現在保有している資産が将来どういった変化をするか」までを読む必要性があるからだ。
つまりマクロ経済の状況・融資している顧客属性を分析して、そこから将来どの程度不良債権化するのかを判断しなければいけない。

だから金融についてはこの2020年1-3月期の決算を見てもほとんど意味がない。
なぜならこれから倒産する企業・破産する人が増えるわけだから 、不良債権比率が低いのは当たり前だし、株価はそれを先読みして下げてくる。

さてここで楽天に話を戻そうと思う。
楽天の足元の状況は楽天トラベルが一番ひどいダメージを受けているが、個人的には1-3月期決算は普通の数値を出してきたが、今後危ない可能性があると思っているのは楽天カード事業である。
クレジットカード事業というのは実質的には会員にクレジットカードを通じて一時的に金を貸していることと同義である。
だから顧客がカードで買った金額を払えなければ貸し倒れでカード会社には損失が出る。
特に長い期間複数回払いしている客やリボ払い客というのは基本的にあまり余裕がない客で、高利で貸している分、不景気が来れば真っ先に不良債権化する融資である。
楽天カードはつい最近までいわゆる「誰でも入れるクレジットカード」として爆速で顧客を増やし、シェアをあげてきたカードだ。
その分顧客属性がすごくリスキーなのである。
それは加入者に対するリボルビング払い残高を見れば簡単に推察できる。

楽天カードは会員数1964万人・カード事業売上高2400億円でリボ残高が6349億円ある。
これがクレディセゾンは会員数2700万人・カード事業売上高5300億円ぐらいでリボ残高4200億円ぐらいである。
この比較をしただけでも会員数当たりのリボ残高が楽天が明らかに大きい。
それに加えて会員当たりの総売上高が楽天は明らかにクレディセゾンより低いのを見ると、楽天カードの会員は総じてクレディセゾンの会員より決済金額が低い≒貧乏ということになる。
つまり楽天カードの会員は相対的に金を持っていないがリボで買い物をしているということになる。
これが楽天カード事業の高収益の秘訣なのである。
楽天はこれに加えてこの楽天カードに低コスト資金調達原資として楽天銀行を利用している。

さて、問題はこの楽天カードでリボ払いしている人達がこのコロナ不況の中でどれぐらいの人が金を返せなくなるかということである。
少なくとも日本のクレジットカード会社の中では最も高いリスクを取っているわけだから、どの会社よりもひどい数値が出てくることは間違いないはずである。
場合によっては意外とそんなに増えないという希望的観測がそのまま実現する可能性もゼロではない。
しかし、それに賭けるぐらいならもっとマシな投資先がいくらでもあると個人的には思っている。
1Q時点でじんわりと延滞が増えているように見えるので、これからが本番というところだろう。

<楽天カード貸倒状況>
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なお楽天のIRについては元担当者が下記のように書籍にしているので、一見の価値あり。


楽天IR戦記 「株を買ってもらえる会社」のつくり方

1QのS&P500のEPS下落は14%程度で、足元の株価はPERが暴落前と不変

US on track for worst corporate quarter since financial crisis

EPSの変化だけ考えれば足元の株価は妥当だけど・・・

 まだ米国企業の決算発表が続いている状態だが、FTによると今の雰囲気を考えるとS&P500のEPSは1Qは14%ぐらい下がっていそうだということだ。
記事を詳しく見てもらえれば各セクターの雰囲気なども書いてあるが、かいつまんでメモしておこうと思う。

・原油関連企業についてはあまりにもアナリストの予想が悲観すぎたのか逆にポジティブサイドに振れており、これが足元のエネルギーセクターの戻り要因になっている。
・インダストリアルや素材も全体としてアナリストの予想が悲観すぎるのでポジティブサイドに振れており、総じて総悲観からセンチメントが回復したことにより、どのような悲惨セクターも大なり小なり株価が戻っている。
・金融はネガティブサプライズの方が多く、理由は本来の景況感から後ずれして出てくるであろう不良債権にどれだけ引当金を積む必要性があるのかというのが読みづらい状況で、1Q時点でいきなり積んでくる企業がそこそこいた。
・テックやヘルスケアは全体としてポジティブサプライズの方が多い。

以上を踏まえたS&P500の株価チャートは結局3/24に大底を付けたあとに一旦急速に反発したあと粘り強く上値を保っている状態にある。
3/24の大底ではド天井から32%下落していたわけで、株価=EPS×PERと要因分解すると14%は一株当たり利益(EPS)が減少した要因、残り18%はPERの下落によって生じたことを意味する。

<S&P500のチャート>
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なるほどS&P500のEPSが14%ぐらい下がったわけで、足元の株価はド天井から14%ぐらい下落のところまで戻っているわけだから、株価=EPS×PERであることを考えればPERはそのままでEPS分だけ下落しましたねということにある。
EPSだけ考えれば天井から14%下にいるというのはフェアである。
世界全体的にロックダウンは4月はじめから5月半ばまで続いているわけだから、おそらくS&P500全体の水準でいうとEPSが前年比14%減少というのは2Qまで続くだろう。
3QからはEPS自体は徐々に回復に向かうと思われる。

しかし最大の問題はPERである。
自分も含めてだが下がると思っている人はこのPERが暴落前と同じはおかしくないかという判断がある。
暴落前は米中貿易戦争の雪解けとともにグローバルに景気が盛り上がっていくだろうというのが前提になっているので、将来の先行き水準を示すPERがそれほど高いというのはなにかおかしくないかと感じるのは普通は妥当な判断になるはずである。
自己株買い減少もPER減少には本来効くはずなのだが、それが未だ示現していない。
そう考えると上記に示すとおり、S&P500でいうと3000の水準を超えるというのは暴落前水準のPERを超える期待値をたたき出さなければいけないので、さすがにそれは今は期待できないと考えてもいいように思える。

米株取引ならSBI証券か楽天かのどちらか

インヴィンシブル投資法人の暫定賃料契約変更についての所見

長々とした言い訳文章書いてるけど、どう考えても投資家馬鹿にしすぎでしょ。

JREITではホテルREITがどういう臨時措置を取ってくるのかと話題になっていたが、インヴィンシブル投資法人が斜め上な適時開示リリースを出してきたので、これをまとめたいと思う。
詳細については下記リンク先を参照してほしい。

ではその適時開示を読みながら以下のまとめを読んでもらいたい。

・知っておくべき前提知識
元々MHMグループがインヴィンシブル投資法人が保有する物件の83物件のうち73物件を賃貸中。
MHMグループはこのREITのスポンサーであるフォートレスの関係法人が運営するファンドから出資を受けており、実質的にMHMグループの株主はフォートレスである。
なお、フォートレスはソフトバンクグループが2017年に買収した不動産メインのファンド会社である。

<参考サイト>

検索結果

・1の概要項目

(この時点でお前のところのリスク管理どうなっとんねんという感覚もあるが)
そしてMHMグループの経営が厳しいということで以下のような措置を73物件に対して6月末まで措置するとのこと。

①賃料契約には固定費用+収益に基づいた変動賃料があるけど、固定賃料を免除するとのこと。
(減額や猶予ならわかるけど免除!?)

②MHMグループが負担していた物件管理費(対象物件の保守メンテナンス)を当投資法人が負担するとのこと。
(いくらなんでもおかしくない?)

③そしてMHMグループに対して払っている管理業務受託手数料を営業継続できるように引き上げるという内容である。
(なんで実質補助金を株主の財布から出さなきゃならないの?)

と上記3つの株主訴訟さえ視野に入るレベルのバリバリの相反利益な契約変更をぶっこんできた。
概要を見ただけでもこれはありえないでしょという話がずらずらと並ぶ。

・そしてこれ以降の2の経緯のところにこれに対する長々とした言い訳が続く。

①MHMグループの契約において、MHMグループは固定と変動費用のミックスで営業利益のアップサイドを当投資法人に払う仕組みになっていて、MHMグループは足元の状況に備える財務基盤がない。
(そんなの知らんがな)

②という事情はあれど、当投資法人の利益の大半はMHMグループからの運営だし、色々貢献しているからホテルオペレーターとしての運営能力は問題ない。
(財務基盤については運営能力にカウントしないんですか?)

③賃料を減免しないとMHMグループが倒産する可能性が高い。
なのでホテル所有者には一定の損失をかぶってもらう必要がある。
(いや、そういうのコミコミで契約ってされてますよね?)

④フォートレスがMHMグループに対して13億円追加出資する予定だけど、それ以上の追加出資はできない。
(なんでできないかは理由が書かれていない)

⑤固定賃料支払い猶予しても契約上あとで回収できないのと、税法上利益計上しなきゃいけなくて現金流出するので猶予では対応できない。
(税法上の理由は理解できたけど、なんで猶予しても固定賃料はその後もらえないのかよくわかりませんでした)

⑥代替先検討したけど、今よりずっと条件悪い契約になるし、代替先が運営入るまでにラグが入って賃料入らないから不利と判断。
(まあわからなくはないが、固定賃料猶予したら同じじゃない?)

⑦今回で多大な損失をMHMはかぶるから、それを和らげるために物件管理費用負担するし管理業務受託手数料も引き上げて補助します。
じゃないと優秀な人材がいなくなるし、将来の運営に悪影響が出る。
(いや、それはフォートレスが追加出資するか融資受けて対応するのが筋じゃね?)

全体として結局はフォートレスが投資家を誘致するためにかなり運営会社にリスクを過大に取らせた後先構わぬ運営方式取ったけど、それが今回のコロナウイルス騒動で全部ご破算になったのですんません勘弁しくださいとばかりの大盤振る舞い賃料契約変更(一応6月末までの暫定措置と言い張っているが)となった。

まあこんなクソムーブ見せるようなリスク資産には一切手を出すのはないなと思う次第である。
どたんばで投資家を裏切る行為を見せる投資対象なんて確かに調子いい時はアップサイドが出るのだが、長期投資とかしていると絶対にどこかで爆弾引いて死ぬパターンなので信用するに値しない。
あとソフトバンクに投資家として関わったら不幸になるというのは間違いない。


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【閑話休題】なぜ芸能人が政治的発言をして炎上するのか

日本人というのは非常にスジを通した行動・思考様式を取る。

相場が動くまで大きなネタがないということもあり、下記炎上案件について少し文化的側面から論じたいと思う。

きゃりーぱみゅぱみゅ ツイート削除の理由は「ファン同士の激論が悲しくなった」

個人的にはこの話について日本人の「スジを通す」という文化が色濃く出た炎上案件だったなと感じた。
なぜそう思ったのか論じたい。
まず自分は日本人がスジを通す文化が根強いという話は下記書籍を読んでそのことを学んだ。


スッキリ中国論 スジの日本、量の中国

まず芸能人が政治的発言をするということについて考えてみよう。
芸能人というのは何かしらの突出したパフォーマンス能力によって人気を得て、一般大衆から人気を獲得するという職業である。
例えばその芸能人自体が政治パフォーマンスによって人気を得てきた人ならば政治的主張をいくら叫んだとしても、それは政治的発言自体がその人の人気の根幹にあるので、スジが通っていると皆が認識し、反発を招かない。
しかし例えば今回の例で大炎上したきゃりーぱみゅぱみゅで考えてみよう。
彼女は政治的パフォーマンスで人気を得てきたわけではなく、あくまで歌手・モデルとして人気を獲得してきた。
つまり、なにか彼女が自分の人気を行使しようと思ったときは歌手・モデル案件以外ではスジが通っていないのである。
だから政治的発言をすることは、彼女が持つパワーを不当に行使していると認識される。
しかもその発言内容自体が間違っていたらどうなるだろうか?
人気パワーを不当に行使した挙句、しかも良く調べもせずに間違った内容を拡散するという二重の不正を働いていると認識される。
このような「スジを通さない」行動は日本人にとっては非常に耐えがたいことであり、炎上するのは明らかであったと思う。
これが今回の炎上事件の根幹にある話だ。
だから今回こういうつぶやきを認めた事務所は全くこうした文化要素を把握せず芸能文化業務をやっているわけで、当の本人にとっては非常に不幸な話だなあと感じる。

これは米国や中国では文化が違う。
中国の場合はパワーを持っている人は政治的な阻害にならなければ何を発言しても良い、それがその人の天命だと認識される。
逆に力を持たない人間が発言する内容なんていうのはいくら正しくても無視される傾向にある。
中国は力こそ全てというまさに修羅なのである。

米国ではまた別の文化が存在する。
米国は歴史的に反知性主義的側面が強い。
反知性主義とは、いわゆるエスタブリッシュはエリートに楯突くことが是とされる文化である。
これは元々欧州の貴族文化や腐敗した宗教に嫌気がさした移民がフロンティアを求めて移民したことから反知性主義が根付いているのである。
だから芸能人が政治的発言をすることはいけすかないエスタブリッシュ・エリートに楯突くことであり、むしろ好ましいとさえ思われているのだ。
そう、まるでその芸能人を宣教師のように扱うのだ。
そのことについては森本あんり氏の書籍を参考にしてほしい。 


反知性主義: アメリカが生んだ「熱病」の正体 (新潮選書)

こういう地域ごとや人種ごとの文化を知ることは投資をする上でも、良き人生を送る上でも重要な生きる知恵だと個人的には思う。

BOEが発刊した金融安定レポートから読み解く金融市場

イギリス中央銀行が出してる金融安定レポートが非常に参考になったのでここで内容を整理がてら共有したいと思う。

<リンク先>
BOEフィナンシャルスタビリティレポート
 
一番大きなトピックとしては足元のコロナウイルス不況により銀行がどれぐらいダメージを受けるかというのを丁寧に前提条件を説明しながら定量的数値を出してきているところにある。
これによるとイギリスのメジャー銀行の中核資本(CET1)は14.8%から11%にまで減少する可能性があると指摘されている。
(資料中ではデスクトップストレスシナリオと記載されている)
さて上記の前提となっている背景は以下の通りである。

・失業率は瞬間風速で10%に到達
・住宅価格は15%の下落
・株価下落は20-25%前提で当初BOEが想定しているストレスシナリオよりもかなり軽め
・政府ギャランティー貸付が続くことが前提
・当初想定していたストレスシナリオでは金利上昇に伴っての経済失速だったが、それとは異なるため住宅価格の下落とモーゲージの不良債権化は従来ストレスシナリオよりも緩和的との見立て
・一方で企業向け・個人向け貸し出しは当初想定していたストレスシナリオ通りの数値を使用。
・企業向けローンの不良債権についてはセクタースペシフィックリスク(観光とか)を厚めに見積もり

以上から想定されること足元の市場というのは、
・コロナウイルス不況による企業・個人へのインパクトはリーマンショックレベルであることは確か
・ただしセクターごとに大きく偏りがあるため、どん底に沈むところとそうでないところの差は比較的大きい。
・金融機関はヘッドライン収益は弱まるが、バッファー量を考えれば今すぐ破綻うんぬんとか騒ぐようなところはさほどなさそう
・CET1の数値が実際ストレスシナリオ通りになると銀行の配当停止になる可能性は非常に高い
・カウンターシクリカルバッファーをゼロにしていればまだならなそうだけど、かなりAT1債の利払い停止が見える水準
・金融機関が倒れることによる不動産の即死はないので、不動産価格の下落はリーマンショックと比べればマイルド

以上はあくまでBOE管轄の範囲でのリスクシナリオであるため、国によって政治による経済サポート・産業構造の違い・所得構造の違い・国民性・為替・金利水準などによってこのシナリオを他の地域にあてはめようとするときは調整が必要である。
ただ概してこのレポートから感じるのは実体経済はリーマンレベルのショックが走っているものの、リスク資産価格はそれと比べれば迅速な政治サポートやここまでリーマンショックの反省による銀行の資本積み増しというバッファーもありリーマンショックの時と比べれば軽いということであろう。

なおAT1債ってなんやねんという方は下記記事を参考にしてもらいたい。

<過去参考記事>

ドイツ銀行がいきなり破産申請をするということは現状ありえない


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プロフィール

村越誠

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