村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

タイのバンコク銀行がクソ高いバリュエーションでインドネシアのプルマタ銀行を買収

バンコク銀、インドネシア銀を買収 2900億円で

タイの経済が成熟しきっていることの証左である。

数ヵ月前からインドネシアのプルマタ銀行について争奪戦が起こっていた。
この銀行はスタンダードチャータード銀行とインドネシア財閥最大手のアストラがそれぞれ45%ずつ株式を保有し、取締役も送って支配していた銀行だったのだが、あらゆる新興国に展開しているスタンダードチャータード銀行が新興国の景気低迷および金融規制強化によって収益性の伸びが見えにくいところや小さいボリュームしか占めない地域については売っていくというオペレーションが行われ、その一環でこの銀行はいらんということで売却俎上に挙がったということだ。
その流れでアストラも保有株を売却するということで、合計90%のプルマタ銀行の売却先を募集していた。

そこで当初手を挙げてたのが三井住友フィナンシャルグループとシンガポール勢のDBS、OCBCであった。
ところが買収金額がそこそこ吊り上がったということでDBSとOCBCは買収を断念。
この2社については元々一定程度のインドネシア営業もできていることから、無理してインドネシアエクスポージャーを取ることもないだろうという判断になったのだろう。

このまま三井住友FGが株を買うので決まるかと思いきや、いきなり横からタイの大手銀行であるバンコク銀行が手を挙げてきて、三井住友の提案から2割さらに上乗せて買収することが決定した。
その金額は上記のニュースでも書いてある通り2900億円である。
しかし、一方でこれはタイの銀行が国内の状況が苦しいということも露呈させている。
タイは昨今の米中貿易戦争の煽りを食らって輸出が伸びず、加えて大量の経常黒字によるタイバーツ高で国内融資が企業融資中心に伸びない状況になってきている。
くわえて利ザヤについてもタイ中銀が利下げしていることから圧縮傾向。
手数料ビジネスもちょっと伸びが見られていない。
また、タイ中銀が現在タイバーツ高対応に苦慮しており、なんとかして海外投資を促進して少しでもタイバーツ高状況を緩和したいという考えもあり、各銀行に対しても圧力をかけているのはなんとなくだが想像できる。

上記のようにアジアの中でも銀行買収合戦にタイの銀行が加わったというのは、タイの経済自体の伸びしろのなさを露呈している以外の何物でもないように思える。
中間所得の罠に陥っているようにも見えるし、新しい産業セクターの成長が見込みづらいということもあり、タイ株を自由に投資できるとしてもあまりやる気は起きないなあと思う。
またバンコク銀行については本当にこんなクソ高いバリュエーションでインドネシアの銀行なんて買って経営管理ができるのだろうか、そもそもタイの銀行って国外のオペレーションマネジメントなんてやったことないだろという大きな疑問があり、株式投資家もこれを疑い株価が買収の噂が出てきた時点で5%も下がる状態となっている。

一方でタイバーツ高というのは大量の経常黒字・貧弱な海外投資体制の間は続く可能性が高いので、タイバーツ高狙いの投資というのは引き続きワークしそうな気がする。 

シェールガス資産の減損をせまられる米国エネルギー株

シェブロン、1兆円強の評価損計上へ-天然ガス価格の低迷響く

見た目のPERに騙されていはいけないということですか。

個人的にはあまり触っていないセクターだし、原油価格も別に下がっているわけでもないのに、米国株の中でダントツでエネルギー株(ようは石油株なのだが)が調子悪いのなんでかなあと思ったら、上記ニュースのようにシェールガスの減損懸念をずっと織り込んでいるということにようやく気付いてすっきりした次第だ。

<S&P500 エネルギーセクターETF>
タイトルなし



シェブロンが1兆円規模でシェールガス資産について減損をかけたということで、多くのシェールガス業者の採算は取れていないということが露呈した。
個人的にはてっきりWTIベースで50ドルあれば大丈夫なんじゃないかみたいなてきとーなことを考えていたが、ヘンリーハブガスの価格が1単位2.28ドルということでここ数年で最悪レベルの値段になっていたことを失念しており、米国中で天然ガスが余ってしまっている状態なことを示している。

ヘンリーハブガスの動きとハイイールドのシェールガス企業の社債価格動向などを見る限り、やはりヘンリーハブガスベースで3ドルぐらいの価格は採算を成り立たせるには必要なように思える。
3ドル以下では損益分岐点に到達することができず、減損にせまられるということなのだろう。

<ヘンリーガス価格のチャート>
タイトルなし


2019年に入ってからより増産が進んだ米国シェールガスだが、大体その辺からヘンリーガス価格が3ドルを切っており、これによって米国エネルギー会社ほぼ全員が持っているシェールガス資産の減損にせまられていて、これによる減配や自己株買い減少リスクというのを株価ははらんでいる、だから株価が上がりづらいということなのだと思う。
そうなるとシェールガス減損リスクというのが払しょくされないと株価はいつまでたっても株主還元が減少するリスクが払しょくされず、だらだらした株価推移しかしないという状態が続きそうに思える。

ただ、シェールガス資産の大半をもう減損し終わったというのであれば、足元マーケットはシェールガス企業の退潮を見越しているのか原油価格は意外なほど堅調な動きをしていることから、株価も最悪期を脱しながら少しずつ回復してくる可能性も見えてくるだろう。

というわけでそうなると分析のポイントとしては投資しようと思っているエネルギー企業が一体どれだけ減損されていないシェールガス資産を持っており、実際これが減損になると減配・自己株買いが減るリスクはあるのかどうか、ここを計算すれば手堅いバリュー投資ができるように思える。
少なくとも単にPER・PBRが安いとか配当利回りが高いからとポジション掴みにいくと、大量のシェールガス資産の減損をくらって破滅しかねないので、見た目の評価指標には騙されてはいけない。
(なお、個人的にはあまり興味ないセクターなので、どこの会社が有利からは上記の観点から自分で見つけてほしい) 

米国は利下げは止まったが2021年後半までは利上げもなしの方向性へ

FRB、利下げ見送り 20年も「追加緩和ゼロ」

米国株価が最高値超えたり、雇用や小売売上高も好調さが継続しているということもあり、今回のFOMCは政策金利据え置き、かつ「不確実性」の文字は声明文から削除された。
まあ実際今の状況でFRB的にも利下げはやりたくないということは確かであろう。
前日まではまだ来年の利下げ確率を70%ぐらいフォワードレートは織り込んでいただろうが、その確率もおそらく低下するだろう。
とりあえず足元でここから利下げを無制限にしていくという可能性は一旦消え、当面は米中貿易戦争の一層の混乱がないかどうかや来年の米国総選挙に向けて経済に影響するファクターがないかどうかを注視するステージになってきた。
FRBも完全に利下げを停止したわけではなく、経済に下方圧力があれば利下げを再開するというのは強調しており、決して警戒感を解いているわけではない。

また、債券投資家においては利上げについての時間軸は伸びているという認識が持たれている。
FOMCで開示される各メンバーの金利予測のドットを見ると2020年いっぱいは現在の下限1.5%でキープ、順調にいったとしても2021年1回(おそらくあっても9月、1.75%)、2022年に1回(2%)という予想になっている。
9月のドットと比べると純粋に25bpsずつ2022年までは政策金利見通しがパラレルに下方修正されており、将来的な金利見通しは実質下方修正されていると認識した。
それもあり利下げ自体は止まったものの、債券投資家はこの先2年ぐらいは利上げないし、あってもたった1年ごとに25bpsじゃないかという話だ。
米中貿易戦争長期化というファクターによって2017年に行われていたような利上げペースを行うのはおそらく難しいだろうというのがコンセンサスになっている。

それに足元はまだ米国の輸入が前年度比マイナスというのが深堀されている状況だ。
この深堀が止まった時を合図にして米国株EPSが切りあがり始めるはずなので、輸入が大幅に前年比プラスというのが見えてこなければ利上げが今考えている以上に加速するということはないだろう。

そう考えれば金利をさらに下に掘るというインセンティブもないが、じゃあ金利高騰の債券暴落なんていうのも本当に利上げが見えてくる条件である輸入の増加がまだ見えてない中で考えるのは時期尚早だ。
株価は割高に見えるかもしれないが、じゃあマルチプルを下げるファクターはなんだと言われれば、2020年中は見当たるファクターは選挙関連以外はあまりなさそうだ。
 

南アフリカは電力もまともに供給できない駄目国家に転落

南アで大規模計画停電、鉱物採掘が中断



汚職国家の成れの果て。

今南アフリカの経済は最悪の状況といってもいい状態にある。
以前に汚職の代表格であるズマ大統領を電撃的に追放することに成功した現大統領のラマポーザ氏が改革を謳い、なんとか南アフリカの経済を復興しようと口では言っているものの、進捗は非常に芳しくない。

とくに一番の問題が現代においてはあって当たり前である電力供給だ。
南アフリカの電力は国営であるエスコムが発電・供給責任を全面的に負って行っているのだが、汚職によって資金が抜かれてきたために、長年メンテナンスや必要な設備拡張をしてこなかったために、足元では度々供給不足で停電が起こる事態が発生している。
その停電も比較的広範囲で起こるため、一般企業が停電のたびに操業を止めることになり、これが鉱工業生産などにダメージを与えたり日常生活に支障をきたしたりと経済成長の下押し圧力になっている。

じゃあさっさとエスコムに資金注入してメンテンナンスと設備拡張をせえやという話なのだが、弱小新興国ということもありその資金を捻出できないという点もあるが、政治家も責任のなすりつけ合いをしていて一向にエスコム支援の話がまとまらず、日に日に被害状況が拡大していっている。

大体の国において汚職はつきものであるが、最近資源に頼り切りであった新興国ほど顕著であるが、資源バブル時代に汚職で様々なインフラプロジェクトからお金を抜いてポケットに入れていても問題なかったのが、資源バブルが崩壊したにも関わらず政治家が汚職で抜くお金の量が変わらず、自国経済にダメージを与えるレベルの汚職が続いてしまい、インフラから崩壊するというケースが目立つ。
また資源に頼り切りで汚職で金を抜きまくる国ほど自国内でまともに起業なんてやってられるかということで新しい企業が生まれてこないという事情もあり、これが資源バブルが崩壊したときに思いっきり弱点が露呈する原因にもなる。
加えてバブル崩壊後しばらく経ってからインフラが崩壊して全ての経済活動に支障が出る時点で、もはや投資が増加するということがありえない状態になる。

この南アフリカの崩れ方はそこまでひどくはないものの、ベネズエラのインフラ崩壊からの経済活動停止コンボと流れは当たらずとも遠からずといった雰囲気が出ているので、ちょっとこのままでは南アフリカは本当に危ないことになりかねないので、例え格付けが1ノッチ下がってもいいからエスコムの立て直しが急務となっている。

なお、そういったことを考慮すると昔流行った南アフリカランド投資はどう見ても分の悪い勝負だと言わざるをえないだろう。
 

ババ抜き化を狙って動き始めたどべジャンク社債投資

Fund managers spy opportunity as distressed debt grows

皆が金を突っ込む前に乗るしかないこのビッグウェーブ的なノリじゃあるまいし。

足元になってここまでずっとぐだぐだで不安視されていたジャンクの中でもよりドベに近い社債への需要が俄かに活気づいてきている。
CLO価格を見てもじわじわとメザニンから順番に価格が回復していることに加えて、一番動きが顕著なのは米国ハイイールド社債のCCC格付けのスプレッドががつんと下がり始めたことだ。
一体なにが起こっているかというと、おそらく上記のニュースを見て先回り買いしているプレイヤーがいることだと思う。

<CCC格付けの米国ハイイールド社債の利回り推移>
タイトルなし

ICE BofAML US High Yield CCC or Below Effective Yield - FRED



上記ニュースではピムコをはじめ大型アセマネ会社3社がリストラボンド・ディストレス債券・不良債権扱いの社債(要はでデフォルト寸前で非常に安くなっている、あるいはもうデフォルトしていて回収率勝負になっている社債)に投資するファンド立ち上げを計画していることが報じられている。
CCC格付けの社債利回りの平均が12%もあるということで、久々の高い水準でかつBB格(たったの4%)やB格(たったの6%)はご存知の通り逆にスプレッドが相当低い水準に突っ込んでいってしまっていることから、この領域のバリュエーションは安いから金を突っ込めという米国お得意のギャンブル中毒的な動きが見え始めている。
(CCC格のデフォルト率とか回収率とかこまけえこたぁいいんだよ的テンション)
そう考えると今年中盤まであった同様な非流動性債券に投資していたファンドがクローズに追い込まれた流れから徐々に変化の兆しが出ている。

<過去参考記事>

流動性のない資産に金をつっこんだヘッジファンドに逆風


これからまだ後発が同様なファンドを立ち上げてくる可能性を感じたプレーヤーがここぞとこれらドベ社債に買い向かって、後から来た人達に高値で押し付けようとしているということだろう。
その対象は主にCCC格付けの社債とCLOのメザニンであることはほとんど疑いようがなく、ここまでバカスカ売られてきてプライスが大きくアンダーパーになって利回りが10%超えている社債が中心になることは間違いない。
CLOについてもとりあえず利下げによるクーポン減少懸念が数カ月前よりもずいぶん低くなったことから買いやすくなっているという理由もある。

このように今まではクレジットの状況と景気動向を見て、ほんとうにクズ中のクズ社債は駄目だなということで、流動性低いクズ社債に投資していたファンドがいくつか閉鎖させられる動きがあったが、足元では逆に新規で立ち上がる雰囲気さえ見せ始めていることから流れは変化しつつあることが見える。

もちろん行き過ぎれば最後はブームアンドバストで市場参加者全員に迷惑をかけながら大爆死する資産カテゴリであるが現状の利回りを見ればすぐにブームアンドバストが来るわけはないので、どの辺までブームが来るのかを観察するステージだと思われる。
現状はまだこの資金流入による発行増が見えないので、ブームが来てると判断するのは間違っていると思われる。

<過去参考記事>

米国CCC格ゾーンのハイイールド社債市場はリスクオフトリガーにはならない

 
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村越誠

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