村越誠の投資資本主義

グローバルな情報をもとに投資資産を積んでいく慎重派投資家

いよいよEUで本来は真っ先に財政出動するべきドイツが動き出すかもしれない

ドイツ連立政権、景気後退時に財政均衡路線脱却の用意=雑誌

まだシュピーゲル報道なので確定していないのと規模感が出ていないが、期待感は高まる。

ご存じの通り主に中国向けの設備投資輸出が大幅鈍化したことから、欧州の景気先行き感の警戒感は非常に強い状態になってきているが、ここでドイツ政府が財政出動するかもしれないという報道をシュピーゲルがリポートした。

こうした財政出動を行おうと具体的に考え始めたのは、やはり支持率狙いといったところだろう。
 まず現在のメルケル政権の退潮が明らかになってきたのが、2018年10月だ。

<過去参考記事>

独州議選でメルケル首相の退潮が明らかになった。


FTの報道ベースで税金カットによる景気刺激策を考慮しはじめているという話が2019年1月だ。

<過去参考記事>

ドイツが景気対策を考慮し始める


合わせて考えるともちろん景気対策的な側面はあるが、与党支持率の拡大のために財政出動による景気刺激策を考えているというところだろう。
欧州では一番金を持っているドイツが財政出動しないとEUの構造上財政刺激策が効かない。
それはなぜだろうか?

ドイツ以外の国が財政出動を行っても、意固地に財政均衡路線を貫いているドイツが貿易を通じて金を吸い取ってしまうからだ。
そして吸い取ったお金で経常黒字と財政黒字を拡大させて、ドイツは健全な運営していると誇るのだ。
別に通貨連合じゃない国ならそれは立派なことだが、通貨連合で一番経済が強い国がそれをやらかすというのは通貨連合のリーダーとしては最悪だとしか言えない。
その財政均衡路線のせいで、ドイツは無駄に周辺国から金を吸い取り、そして周辺国は経済の活力をどんどん吸われて活力を失っていく。
これが現在のEU経済が弱い理由の一つになっている。
しかもドイツとその他の国の規模感は大きく違うので、インパクトもはっきりいうと薄い。

なので、市場が待ちに待ったドイツによる財政出動が出てくれば、欧州の景気に与えるインパクトはそれなりに考えなければいけないし、市場が期待するのも非常にわかる。
ただ、これでGDPの1%ほど支出増やしまーすとかケチ臭いことを言うとずこーっと市場が滑ってしまうので、一体どれだけの財政出動を行ってくるかはしっかりニュースを追わなければいけない。
本気で景気刺激策を打つなら、EUのルールぎりぎりの対GDP比3%ぎりぎりぐらいの赤字が出るレベルで財政出動してほしいところだ。

それにドイツ10年国債の利回りはなんと驚きの-0.6%だ。
<ドイツ10年国債利回りのチャート>
タイトルなし

これ普通に考えると、本当に10年国債を利回り-0.6%で発行できるなら、簡易的に計算すると発行額面100に対して94しか返す必要性がないことを意味している。
じゃあ6の分だけどうぞお金を使ってくださいと債券投資家は認めているということだろうか?
ここまでマイナス利回りが深まるなら、少なくともマイナス利回り分だけ喜んでお金を使っていいんではなかろうか?

インドの最大財閥のデレバレッジは何を意味しているのか

印財閥リライアンス、1.5兆円調達 財務立て直し急ぐ



インドのリライアンスインダストリーズはインド最大の財閥で、インドからの輸出の2割がリライアンスインダストリーズからのものと言われている。

そんなリライアンスインダストリーズが前々からニュースにはなっていたが、化学精製事業の株20%をサウジアラムコに売るということを発表した。
加えて小売り事業およびここまで多額の投資を行ってきた無線通信事業であるリライアンスジオについてもIPOを予定しており、こうして得た資金はネット有利子負債をゼロにするために借金返済に使うと公言した。

2016年から多額の投資資金を無線通信事業に投資してきて借金を業績のテコにしてきたインド最大財閥がここにきて借金を減らす戦略に転じてきた。
これが何を意味するか考えると、手元資金を増やして防御を固めておこうと考えを変えてきたとしか思えない。

化学精製事業の株を一部売り、小売りも無線通信もIPOさせて一部株を売りたい。
これは資産が高いうちに利益確定しておこう、なに資金さえあれば不況になったら有望な資産を買えばいいじゃないかという戦略変更としか個人的には見えない。
特に伸びている小売りと無線通信リライアンスジオをIPOさせるとはっきり明言したことは投資家にとっては初耳情報であり、サプライズとなった。

少し話が前後してしまったが、リライアンスインダストリーズが考えていることをまとめたいと思う。
ここまで精製事業では米中貿易戦争に伴う化学製品需要の減退でマージンは圧迫されつつあり、当面伸びも期待しづらそうだというのは誰の目にもあきらかだ。
加えて米国勢が安価なシェールガスを利用した化学品精製も拡大させていく兆しがある中、ドバイ原油を使っているリライアンスはいくら巨大かつ高効率な精製所といえど競争激化は必至だ。
一方でサウジアラビアは石油掘削一本足打法から多角化していきたいと考えている。
というわけでサウジアラビアに高値で株を一部売りつけてやろうというのがまず一つ目の動きだ。

そしてリテールとジオのIPOについてもなんとなく思い当たる節がある。
それはインド経済の減速だ。
これは完全にインド固有の問題だが、ノンバンク金融の目詰まりでインド経済は急速に落ち込んでいる。

<過去参考記事>

インドの銀行は再び不良債権沼に沈むのか


今後インド経済が厳しくなると考えればインド国内景気から影響を受ける部分も高値のうちに一部売却しておこうと考えるのは自然なことだと思う。
とにかくインドの最大財閥がインド経済に対して良くは思っていないということがはっきりしていることは間違いない。
(普通は景気見通しが明るいなら借金積み増してでも投資すると思われるし) 

ハイイールド社債と投資適格社債のスプレッド格差が拡大している背景

Investor aversion to riskiest US corporate debt nudges yields higher

最近一番気になる動きはこれだ。

ハイイールド社債がどかどか売られる中、相対的にしっかりしているのが投資適格社債市場だ。
しかしじわじわとハイイールド社債と投資適格社債のスプレッド格差が拡大しているが、なぜ投資家はこれを無視している状況なのか?
これは現在の社債市場の投資家動向が大きく関係している。

一般的にはハイイールド社債市場というのは銀行が自己勘定部門で保有するという枠は極めて限られている。ハイイールド社債市場はいわゆるもっとリスクが取れる個人・ヘッジファンドなどが中心であり、年金や銀行の自己勘定部門は一部持っているとしても枠はそこまで大きくない。
そういったハイイールド債市場ではじわじわと売りが広がっており、対国債のスプレッドは米ドル建てハイイールド債市場の格付けBBレンジにおいて4月頭200bps程度が足元で274bps、B格レンジでは昨年9月に300bpsだったものが462bpsと拡大している。
明らかにリスクセンチメントに敏感なマネーは足元のファンダメンタルズの不透明さから一旦リスク資産から距離を置いておこうと引いている感触が得られる。

一方で投資適格社債はBBB格でさえせいぜい136bpsが162bpsに拡大している程度で、米国債金利低下で単価自体は下がっていないので悲壮感はあまり産まれていない。
これは現在の投資適格社債市場のメインプレーヤーが銀行の自己勘定部門であることと大きく関係している。国債金利の低下に伴って銀行は運用先に大きく困っており、償還された国債を順にどこか別の利回りのある資産に配分していく必要性がある。
そこで主戦場となっているのは投資適格社債となっているのだ。
だから国債が償還された分だけ投資適格社債市場に継続的に資金が流入しているため、ハイイールド社債市場と比べてリスクオフの度合いが緩やかに見えるということである。

しかしこの銀行の自己勘定部門マネーというのは非常にやっかいなマネーだ。
市場が荒れて一定程度の閾値をまたいで価格が下落すると、上層部から強制売却を命じられるタイプのマネーだ。
しかしそれが起こるまでは逆に買えと命じられるタイプのマネーでもある。
つまり普通の人から見たときなんで売られないのかと不思議に思うような市場環境でもなかなか買いが途絶えない一方で、下落が起こるときは全員が同じ行動を行うので今後はえ、そこからさらに売るの!?というところまで銀行自己勘定部門の売りのせいで崩れる。

今足元のハイイールド社債市場はその無理くり投資している銀行自己勘定部門とは関係性が薄いので、こちらの方がより市場のリスク実勢を判断している市場だと思われるが、このハイイールド社債市場と投資適格社債市場のスプレッド格差がどのレベルに達したら、あれ?投資適格社債市場のバリュエーションおかしくね?と思われるかがキーポイントになりそうな気がする。 

米国債逆イールドについての所見まとめ

米30年債利回りが初めて2%下回る、2年・10年逆イールドも再出現

米国の2年と10年国債の利回りがインバート(逆転)したということが話題になっているので個人的な考察を述べてみようと思う。

一般的には長短金利の逆転というのは中央銀行が後手に回ってしまっていて、長いところがより強い金融緩和をせっついている一方で、短いところは中銀のアクションが遅れているので長いところほど下がらないという事象が発生することによって現れるイールドカーブの形態と解釈される。

確かに通常の景気サイクルであればそうとらえることが自然だと思う。
でも今回FRBが後手に回っていると思われることについては不憫極まりないなと感じる。
なぜなら今回の景気減速のほとんどが米国トランプ大統領の保護主義が原因だからだ。
特にトランプ政権の保護主義の悪いところは産業界などに根回しなしに突然発表することにある。
確か関税第一弾らへんとかは一応根回しをしていたはずなのだが、もはや最近の保護主義政策は絶対に産業界からはNOをつきつけられるのをわかっているのか、事前根回しなんてほとんどしている形跡が見られない。

根回しなしで発表するわけだから、産業界もFRBも予見することが難しい。
そして将来についてトランプ政権が次にどういった保護主義政策を実施するのか予見できないので企業が設備投資計画や発注計画をまともに策定することができない。
だから急速に企業支出が滞り始める。
FRBも事前に立てていた景気予測を新しい保護主義政策が出るたびに書き換えなければいけない。
そんな状態でFRBが後手に回るなという方がはっきりいって難しいのではなかろうか?
そしてトランプ大統領はFRBに景気が悪くなっているんだから金利を下げろと言っているが、現状の景気減速の原因が将来の米国の貿易政策が読めないせいで抑制されてしまっている企業支出が原因なわけで、いくら金利を下げようが将来予見できない根本原因が取り除かれていないので政策金利引き下げが景気浮揚策になるわけはない。

これは別にパウエル議長ではなくて、他の議長でもほぼ同様に後手に回ってしまうことは想像に難くない。
景気を浮揚させるためには、少なくとも現在のトランプ政権の根回しなしの保護主義政策の実施をやめ、企業に予測可能な政策ガイドラインを示す必要があるだろう。
それだけでも随分市場の雰囲気は変わるものと思われる。

とにかくトランプ政権の曖昧な線引きが企業のリスクテイク姿勢を悪化させていることは念頭に入れて投資に臨んでいきたいと思う。そしてこのまま雑な政策運営を続けると、去年12月末のような相場の動きになることも頭に入れておきたいと思う。 

対中国への貿易関税延期は中長期的なファンダメンタルズ変化には寄与しない

トランプ氏、対中追加関税を一部12月に先送り スマホなど

トランプの匙加減次第なのでどうしようもない。

米国が対中国関税第四弾について一旦延期すると発表。
これはクリスマス商戦に影響が出ないようにクリスマスまでに輸入しておけよという話だろう。
一応トランプ大統領も少しは国内の消費者のことを考えていると思われる。

しかし、企業で実務を担当している人にとってはたまったものではないだろう。
ここまでトランプ政権の対中関税についてはここまでの雰囲気を見ていると企業への相談などなしにいきなり発表してくるというパターンを取っているため、企業側はそれに対して逐次対処するしかない。
対処といえば聞こえはいいかもしれないが、右往左往しているという言い方が一番正しいように思われる。

そして今回第四弾についてクリスマス商戦までは延期されるけど、その後はじゃあどうなんだっけと考えると、ここまでのトランプ政権の突発的な対中関税の発表履歴を考えれば事前予測を立てて発注計画や投資計画を策定することは難しいだろう。
というよりもそんな予想を部下が策定してきたら「お前トランプ政権の貿易政策そんな読む自信あんの?ちゃんと根拠あるの?」と普通の上司は反応すると思う。
企業CEOだって、もし大型投資決めたのに、結局トランプ政権のさらなる過激な対中貿易政策でその投資が駄目になったら株価は目も当てられないことになるし、自分のクビも危ういだろう。

それを考えれば今後も各企業の設備投資金額は米中貿易戦争の影響を受けない範囲に抑制するというのが一番妥当かつ賢明な判断であることは疑いの余地がない。
昨日の米国株の相場を見ても、関税延期で寄りで大幅上昇したが、その後はさらに上げ幅を上げるという動きでなく、いわゆる寄り天的な動きであり、一旦のショート踏み上げ以降はわざわざ買い進もうという投資家が少ないことがはっきり見てとれる。
あくまで売っていた人達が慌てて買い戻した分だけ上昇したに過ぎず、追随買いが出ているとは言い難い。

ファンダメンタルズ的にはたしかに米国クリスマス商戦に向けて一部中国から米国への輸出が回復するという事象はあるだろうが、それもクリスマスまでの賞味期限と短いので、減退している設備投資に対する効果はほとんどないだろう。
そう考えるとやはり昨日の米国株の上昇は一過性的な性格が強く、とてもではないが減速傾向にあるファンダメンタルズを打ち返すほどの力はない&ファンダメンタルズに対しては割高という判断をせざるを得ないだろう。
ここで全力で買いに向かったらなにか良いことがあるとはとても思えないと個人的には考えている。 
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プロフィール

村越誠

投資に関して気づいたことのメモをしていく。 ご連絡の取りたい方は、makoto.muragoe★gmail.comまで(★を@に変換してください) ツイッターで更新情報配信⇒https://twitter.com/Makoto_Mura?lang=ja
個別企業分析サイトも始めました。
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